個展開催中ですが、個展とは関係ないけれども、書いておきたいことがある。
ずっと遠出する時以外はやめていた、お酒を飲みつつ、居酒屋の隅っこでこれを書いている。
とある作家さんが15周年を迎えられました。
朝丘戻。さんだ。
僕の中で、唯一読める作家のお二人のうちの、おひとり。
もう1人は、村山由佳さんだ。
男性同士の色恋沙汰である。
これを書くと、え、あなたオタクなの?と感じられるかもしれない。毛嫌いされるかもしれない。
でも、そんなことどうでもよくて、真実はそうではないのである。
オタクっぽいところもあるけれども。
朝丘さんの作品との出逢いは。
15年前となる。
愛媛の田舎町の小さな本屋の小説コーナーに平積みにされていた、コバルト文庫版の『春恋。』
可愛らしいイラストの表紙。
隣には赤川次郎の新刊。
当時15歳だった自分は、純文学と疑わなかった。
小説を読む癖はなく、村山由佳さんか、銀色夏生さんの詩集ばかり読むコだった。
小説には多ジャンルあるとは思わなかった。
小説を買う時の儀式がある。
あらすじを読み、最初の一文を読む。
そこで大体の感覚が分かる。
読み進められるか、否か。
それを続けていくことで後に、読み切れる作家は2人に絞られてしまったのですが。。。
つまり、その儀式をして手にすっぽり収まった本を大事に、ママチャリに乗って夜の10時に買って帰った。
読み進めていくにつれて、
胸が苦しかった。
美大生の家庭教師と、受験生の男の子の話。
詩のような、真綿のように優しいのに槍のように鋭い言葉に心が強く惹かれていった。
ごく当たり前の私小説を読んでるような感覚だった。
当時、僕は、漫画や同人誌を作る友人グループの中にいた。
ゲームはやるけど、FFだけ。
周りは恋愛シミュレーションをやってたのに、自分の恋するキャラではなくて、キャラ同士の恋愛を妄想して楽しそうだった。
漫画は読むけど、なかよしとかが好きだった。
同人誌ってなに?日曜日みんながサークル参加してるからって理由だけでおでかけライブに行って話だけしてた。
絵を描くことができない、妄想が出来ない自分は、付いていくだけついて行き、人とはぐれないようにしてただけだった。
自転車に乗って遠出が出来るのが楽しかった。
そうこうしてたら、出逢ってしまった。
朝丘戻。さん。
雷で打たれるというよりかは、
静かに水が湧き出るようなマグマのような衝撃。
彼女を純文学の小説家だと思い、中学の校舎で何十回目の読み直しで読みふけっていたら、
友人に『え?BL好きなん?』と言われた。
あれは?これは?って勧められたけど、どれもダメだった。
とりあえず身体結んどけ!的なものが多く、嫌だった。
心も通じてないのに、身体を重ねるなんて嫌だった。
春恋。の、アキと美里も付き合う前に身体を重ねるが、美里側の視点でじっくりと叶わぬ恋を記して覚悟の上での情事ゆえに綺麗だったのだ。
はきだめのようなセックスではなく。
この2人は聖人君子かと思ったくらいだった。
そこからこちらも大学受験になり、みんなバラバラになった。
知り合いがなかなかできなかった自分は、ホームページを作って更新するのが日課だった。
京都に進学した友人からメールがきて、
ホームページ見たよ、とバレていた。
そこに記された作品を見たらしく、
自分のお気に入りのゲームのキャラクター同士の二次創作を頼まれた。
ゲームで遊んだことなかったし、キャラのこともわかってなかった。
最低限の情報だけもらって、普段ホームページで書いていた詩のような話を紡いだ。
友人からは、
『めっちゃ甘々で、どこかひなたにいるような暖かさなのに、2人がどこまでも苦しい恋をしてるようで頼んでよかった。ありがとう。』
と言われた。
その知人とはもう10年も連絡を取ってないし、連絡先も知らない。
きっとそういう苦しい恋の話は、自分の元来の潔癖もあるが、朝丘さんから学んだものだと思う。
大学生の後、言葉を紡ぐことはしなくなった。
代わりに写真を撮るようになった。
奇しくも、朝丘さんも写真を大切にしている方である。
ホームページにはどうしたらこんな写真撮れるの?というビビットなのに静かな写真が載っている。
当時、ホームページに公開されていた、雪のお話が好きだった。
医者と学生かなにかのお話で、雪の中のお話。
真っ暗なのに真っ白な情景が浮かぶ話。
それから15年。
村山由佳さんと同列にずっと新刊を追い続けている作家さん。村山さんは、ダブルファンタジーと、青のフェルマータが好きだ。
春恋。の2人が好きすぎたが、春への2人も好きだ。
そして、いつの間にか、熱田神宮へいく機会にも恵まれて、あーここがあの2人が参った場所か。とも。
ほかの作品も大好きである。
でも、やはり、春恋。は特別。
今年、というか、今、僕は、記念の写真展をしている。
どこか憂いを秘め、闇を写すと言われている。
でも、根底にある想いは変わらない。
小説を受け入れられる作家さんが2人しかいない時点で、狭い世界の人間かもしれないが、
自分の価値観、世界を構築するには十分すぎるほどだ。
愛の形は1つではない。
マイノリティを抱える自分だからこそ、出会えてよかったと心底思っている。
作家さんへのお祝いの気持ちを書きたかったのに、個人的な感情を書き連ねるだけになってしまった。
記念すべき個展の最終日。
銀色夏生さんの詩を読み上げる。
その中で、朝丘さんのことも語ろうと思う。
そして、この個展が終わったら、
写真と言葉を深く掘り下げるつもりでいる。
それが次のステージだと思っている。
今回の15周年の本に載ってる、彼女がBLを書くに至った理由のとおり、僕はあなたが誰かの小説でセックスだけではないBLの世界に美しさを見出したように、
僕は、あなたの小説で、その美しさを感じて、またペンを滑らせると決めました。
そんな記念すべき時に、あなたが15周年迎え、記念本を出されたことに、最大限の敬意を払って。
人生の半分以上を、彼女の紡ぐ言葉とともに過ごして行くことを楽しみに。
PS 写真の言葉は、僕がかつての一回りも違うパートナーに送った言葉と似ていたのでした。心がとても震えた。
http://tatu.hatenadiary.com/entry/2017/03/05/212350

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